堂内を見学した後、本来ならもっと市内を見て廻りたいところだったが、これからニュルンベルクに行って観光しなければならない。「また何時か来ればいいさ。」と思いながら今来た道を戻って行った。
歩き始めて数分後、辺りの様子に全然見覚えがないのに気が付いた。道に迷ってしまったのだ。
こうなると自分ではどうにもならない。仕方なく通りがかりの買い物籠を持った婦人に道を尋ねた。彼女は駅までの道を説明し始めたが、直に黙ってしまった。道が入り組んでいて説明が難しかったのだ。するとその婦人は「一緒に来なさい。」と言ってわざわざ駅まで私を案内してくれた。駅までは来たときより時間がかかった。どうも反対の方向へ歩いていたようだ。
一緒に歩きながら婦人は「どこから来たのか。」とか「これから何処へ行くのか。」とか色々私に尋ねた。駅前に着いてお礼を言うと、婦人はまだ私に色々聞きたいと見え、ベンチに座り「ちょっと待ってなさい。」と言ってアイスクリームを二つ買ってきた。
「自分には息子が二人いて・・」と、今度は自分のことも話してくれた。婦人は「電車の切符がうまく買えるか一緒に行ってあげる。」と切符売り場まで来てくれた。切符を買うと、「なかなか上手いじゃないか。」と言って喜んだ。
結局、婦人はホームまで一緒に来て、電車が出発するまで私に付き合ってくれた。電車がゆっくり動き始めると「良い旅行を！」と私に手を振った。私も「有り難う御座いました。」と手を振った。電車は次第に速度を上げおばさんの姿も見えなくなった。
レーゲンスブルクの想い出は大聖堂ではなく、この親切な、ちょっとおせっかいで、気のいいおばさんの想い出となった。
あのおばさんはまだ元気にしているだろうか。 |
