St Botolph's Church, Hardham
聖ボトルフ教会はウェスト・サセックスのハーダムにある教会です。11世紀中頃に建てられたこの教会を有名にしているのは堂内一面に描かれた壁画です。先ず外観から見てみましょう。
教会の詳細についてはこちらを見て下さい。
聖ボトルフ教会の外観
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| 聖ボトルフ教会（北側） |
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| 聖ボトルフ教会（北側） |
聖ボトルフ教会（南側） |
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| 聖ボトルフ教会（西側と南側） |
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| 聖ボトルフ教会（南側） |
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教会の南側の壁に大きく斜めにへこんだ窪みがあります。ここには嘗て小さな隠棲所がありこの穴を通して祭壇が拝めたそうです。
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| 嘗て隠棲所から祭壇を拝んだ穴の跡 |
嘗て隠棲所から祭壇を拝んだ穴の跡 |
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それでは堂内に入ってみましょう。
聖ボトルフ教会の内部
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| 身廊（西から東方向） |
この教会には12世紀初頭に描かれた壁画が残っています。これらはいつの頃か漆喰で完全に塗りつぶされ、1866年に再発見されるまで忘れ去られていました。さきだつ1862年、内陣アーチの漆喰が剥がれ下地の石材が露出しました。その際、南側に描かれた唐竿で脱穀する男の部分を除く一連の「月の労働」の壁画が剥離して現れました。
壁画は二段で構成され上段は下段に比べ状態は良いものの劣化はかなり進んでおり、まったく判らないものもあります。下段はほとんど失われた状態です。
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| 身廊（東から西方向） |
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| 聖ボトルフ教会のプラン |
上図は聖ボトルフ教会内の壁画の位置を示したものです。黒字の数字をクリックするとそこに描かれた壁画が見られます。灰色の数字の場所は失われているか撮り忘れたものです。この図に戻るときはバックスペースを使って下さい。
身廊の壁画
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| 身廊の壁画 |
側廊の東、南、北各壁の上段は降誕とキリストの幼年期を題材としており、内陣アーチの南側から展開します。
東側（内陣アーチ）
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| 内陣アーチの壁画 |
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| 内陣アーチの壁画 |
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| (1) 内陣アーチ側廊側中央の神の子羊と天使 |
(1) 内陣アーチ側廊側中央の神の子羊 |
内陣アーチ上部：神の子羊のメダイヨンと両脇で礼拝する天使
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| (2) 受胎告知と(3) マリアのエリザベト訪問（内陣アーチ側廊側南上段） |
東壁上段：受胎告知とマリアのエリザベト訪問
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| (2) 受胎告知 と (3) マリアのエリザベト訪問 |
(2) 受胎告知 |
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| (25) 月の労働 と (15) キリストの洗礼（内陣アーチ側廊側南下段） |
キリストの洗礼とアーチの間には「唐竿で脱穀する男」が描かれています。これは一連の「月の労働」の一部でその他の月はアーチに直接描かれていたらしいのですが、現在は失われています。
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| (14) 博士たちの間で論議するイエス（内陣アーチ側廊側北上段） |
(14) 博士たちの間で論議するイエス（内陣アーチ側廊側北上段） |
東壁（内陣アーチ）の北側上段：博士たちの間で論議するキリスト
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| (24) 「聖ジョージの埋葬」（内陣アーチ側廊側北下段） |
東壁（内陣アーチ）の北側下段：「聖ジョージの埋葬」
南側
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| 側廊の南壁と西壁 |
南壁の上段には東側から降誕、羊飼いの訪問、星の出現、マギ（東方の三博士）の旅、ヘロデ王と祭司長に面会するマギが描かれています。
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| 側廊の南壁と西壁 |
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| (4) 降誕のキリストと両脇の牛とロバ |
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| (4) キリスト降誕のマリア |
(4) 降誕のキリストと (5) 羊飼いへのお告げ(右) |
南壁の西側の「降誕」の部分です。横たわるマリアの部分はほとんど判りません。布にくるまれたキリストはマリアと離れて描かれ、その両脇には牛とロバが見えます。その右では天使が羊飼いに救い主の降誕を告げています。
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| 南壁の中央部分 |
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| (6) 不明 向かい合う人々 |
(7) マギの旅 |
南壁の窓の右に向かい合うように立つ人物が描かれていますが、この部分は判然としないようです。堂内の説明ではヘロデ王の司祭達ではないかとのことです。続く右側にはマギ(東方の三博士）がキリストを礼拝し贈り物を献げるため旅をしています。
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| 南壁の西部分 |
(8) 嬰児虐殺を命じるヘロデ王 |
玉座のヘロデ王が兵士に嬰児虐殺を命じています。
続く西壁には地獄の様子が描かれていますが、物語は北壁の西側へと続きます。
北側
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| 身廊の北壁と内陣アーチ(右) |
北壁の上段には西側からマギの礼拝、夢でお告げを受けるマギ、夢でお告げを受けるヨセフ、エジプト避難、嬰児虐殺が描かれています。
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| 身廊の北壁(右)と西壁 |
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| (9) マギの礼拝 (10) ヨセフの夢 (11) 眠るマギへのお告げ |
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| (9) マギの礼拝 |
右にキリストを抱くマリアが座し、左の三人のマギが礼拝し贈り物を献げています。
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| (9) マギの礼拝 |
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| (10) ヨセフの夢(上) (11) 眠るマギへのお告げ(下) |
上のアーチでは眠るヨセフ(マリアの夫）に天使がヘロデ王の嬰児虐殺を逃れエジプトに避難するよう告げています。
下のアーチでは帰国の途につき眠るマギに天使がヘロデ王のもとを避けて帰るよう告げています。この場面はフランスのブルゴーニュ地方オータンのサン・ラザール大聖堂にある柱頭彫刻が有名です。
この二つの夢のお告げの部分も損傷がひどく説明を読んで想像を膨らませないとそのようには見えてきません。
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(12) 聖家族のエジプト避難 と 偶像の崩壊 |
キリストを抱くマリアがヨセフの引くロバに乗りエジプトに避難しています。その右では壁龕の偶像が崩落しています。
これは希に「エジプト避難」と共に描かれています。聖家族がエジプトの Sitina の町に着いたとき異教の偶像が崩れ落ちたという言い伝えによるものです。フランスのアミアン大聖堂の西側腰石にも同様のレリーフがあります。
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| (12) 聖家族のエジプト避難 |
(12) 偶像の崩壊 |
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| (13) 嬰児虐殺 |
(13) 嬰児虐殺 |
下段に描かれた身廊の壁画はそのほとんどが失われていますが、北壁の聖ジョージ（聖ゲオルギオス）の伝説の部分がかろうじて確認でき、教会全体の壁画の制作時期を推測できるそうです。西側からアンティオキア攻囲戦（1098）に介入する聖ジョージ、ディオクレスの審判を受ける聖ジョージ、車輪で磔（はりつけ）にかかる聖ジョージが描かれています。
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| (20) アンティオキア攻囲戦に参戦する聖ジョージ |
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| (21) ディオクレスの審判を受ける聖ジョージ |
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| (22) 拷問される聖ジョージ |
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| (23) 車輪で磔にかかる聖ジョージ |
(23) 車輪で磔にかかる聖ジョージ |
西側
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| 身廊の西壁 と 北壁(右) |
西壁には地獄の責め苦が描かれていますが、損傷がひどくはっきり確認はできません。
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| (26) 地獄 身廊の西壁 |
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| (26) 地獄 身廊の西壁の壁画 |
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| (26) 地獄 身廊の西壁の壁画 |
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| (26) 地獄 身廊の西壁の壁画 |
次は内陣へと進みます。
内陣
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| 内陣の祭壇 |
東側の両角
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| (38) ヨハネの黙示録の長老達 東壁の南側と南壁の東側 (東南角上段) |
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| (38) ヨハネの黙示録の長老達 東壁の北側と北壁の東側 (北東角上段) |
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| (38) ヨハネの黙示録の長老達 東壁の北側と北壁の東側 (北東角上段) |
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| (38) ヨハネの黙示録の長老達 東壁の北側と北壁の東側 (北東角上段) |
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| (32) ユダの裏切り(左) と (33) 鞭打ち (北東角下段) |
内陣の北東角には北側に「ユダの裏切り」、東側に「鞭で打たれるキリスト」が描かれていたそうですが損傷してまったく判りません。
南側
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| 内陣の南壁 |
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| (37) 使徒達 (上段) |
内陣の南北の壁の上段には使徒が六人ずつ描かれています。
南壁の六人の使徒像は1950年に再発見されたものです。
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| (36) 洗足のキリスト (下段) |
南側下段には弟子の足を洗うキリストが描かれていますが、肝心のキリストは南側中央に窓が設けられた際に失われています。
北側
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| 内陣北壁 |
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| 内陣北壁 |
内陣の北側の壁上段には六人の使徒、下段には「最後の晩餐」が描かれています。
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| (37) 使徒達 (上段) |
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| (31) 最後の晩餐 |
東側（内陣アーチ）
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| 内陣東壁の南側 |
(27) アダムのイブの誘惑 内陣東壁の南側 (上段) |
堂内で最も鮮明に残っているのがこのアダムとイブです。この壁画を見て気付くのはその腹部の不自然さです。
これは一種のだまし絵で下腹部を隠すために何かを吊り下げているように見せているのではないでしょうか。中世の慎み深さの表現かもしれません。
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| (27) イブを誘惑する蛇 内陣東壁の南側 (上段) |
右側では蛇がイブを誘惑しています。蛇には翼がありドラゴンのようにも見えます。
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| (28) アダムとイブの堕罪 内陣東壁の南側 (下段) |
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| (30) アダムとイブの労働 内陣東壁の北側(上段) |
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| 洗礼盤 |
身廊に置かれた八角形の洗礼盤は15世紀のものです。
ハーダムの聖ボトルフ教会（St Botolph's Church, Hardham）の見学はこれで終わりです。 見所である壁画は劣化と損失した部分がほとんどです。鮮やかな色が残りはっきりそれ判るのは内陣西側に描かれたアダムとイブとこのちょうど裏（身廊側）の受胎告知だけです。堂内の説明書きには各部分の解説がありますが、どのように見ればそう見えるのか理解できない部分がたくさんありました。
次はブルックランドの聖オーガスティン教会を訪ねます。
